・・・そんならこれから火を起してフライにしてあげましょうか。とにかくはやくいらっしゃい。」 二人はあんまり心を痛めたために、顔がまるでくしゃくしゃの紙屑のようになり、お互にその顔を見合せ、ぶるぶるふるえ、声もなく泣きました。 中ではふっふ・・・ 宮沢賢治 「注文の多い料理店」
・・・十時過ぎ目をさますと、ふき子は、「岡本さん、おひる、何にしましょう、海老のフライどう?」 話し声が、彼等のいるところまで響いた。「フライ、フライ!」 悌が最も素直に一同の希望を代表して叫び、彼等は喜色満面で食卓についた。とこ・・・ 宮本百合子 「明るい海浜」
・・・食事のときも、集っている将校たちのどの顔も沈鬱な表情だったが、栖方だけ一人活き活きとし笑顔で、肱を高くビールの壜を梶のコップに傾けた。フライやサラダの皿が出たとき、「そんな君の尉官の襟章で、ここにいてもいいのですか。」と梶は訊ねてみた。・・・ 横光利一 「微笑」
出典:青空文庫