・・・者、杉山氏へのわが寛大の出来すぎた謝辞とを思い合せて、まこと健康の祝意示して、そっと微笑み、作家へ黙々握手の手、わずかに一市民の創生記、やや大いなる名誉の仕事与えられて、ほのぼのよみがえることの至極、フランク、穏当のことと存じます。・・・ 太宰治 「創生記」
・・・ただに遠国のみならず、現に両国境を接する日耳曼と仏蘭西との戦争において、日は仏より五十億フランクの償金を取上げたり。他なし、隣国を貧にして自から富むの手段のみ。 かくの如きはすなわち、日耳曼の人民は隣人の貧困をみて愉快を覚ゆる者ならん。・・・ 福沢諭吉 「教育の目的」
・・・ そして、その整ったと云う理想の形は、只無暗に人の心の裏を悟るに早く、自己をフランクに表わす事なく、凝と総てを両歯の間にかみしめて、眉を上げたような女でございます。 女性の持つべき総ての特性を完全に育てられては居りません。従って、彼・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・ 若し自分が行くのが不愉快なら、何故フランクに行くな、と云って呉れないのか、 行かせたなら、どうして、もう少し寛大に、自分の娯んで来たことを悦んで呉れないのか、 其為に、行って来ても、受けた十の悦びを、一にも半分にも減して表情に・・・ 宮本百合子 「二つの家を繋ぐ回想」
・・・ それがフランクに、友人として、種々のことを話したり、「随分ぼろ家ですからね」と、仮令金高は僅かでも、好意で引いたりして呉れたことは、真から二人に快感を与えた。 此から幾年か居る、その家を貸すものに、唯利害関係からではなく、・・・ 宮本百合子 「又、家」
出典:青空文庫