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・・・ 鮮やかな形のうちに清い渋みをたたえたライラック色の花弁は、水のように日を燦かすフレームの中で、無邪気な、やや憂いを帯びた蝶が、音を立てず群れ遊ぶように見えた。 飴緑色の半透明な茎を、根を埋めた水苔のもくもくした際から見あげると、宛・・・
宮本百合子
「小景」
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・・・ 始めの目論見と違って、平庭のまま芝生が出来たり、南を向いてフレームが出来たりした。静かに絶間なく幸雄を待っている母親の心が石川に伝わるようであった。 病人は足掛四年目になって戻って来た。 住宅地には生垣が多い。山茶花を・・・
宮本百合子
「牡丹」