・・・り ○自由でない水 ○石炭のすすで足袋などすぐ黒くなる部屋 ○雪がつもり、窓をふさいだ家の裏側 ○まるで花のない部屋 老ミセス、バチェラー ○大きい猫目石のブローチ ○網レースに、赤くエナメル・・・ 宮本百合子 「一九二五年より一九二七年一月まで」
・・・ヴィクトーリア女皇が贈ったブローチを白レースの襟の上に飾ったナイチンゲールの肖像は世界の隅々にまで流布した。 世間的な名声は、クリミヤでの英雄的な行為の記憶によって、世の人々の間に生きた。が、それから後の三十年間に、ナイチンゲールがほと・・・ 宮本百合子 「フロレンス・ナイチンゲールの生涯」
・・・白い衣にマッカのルビーのブローチをして、水色のバンドをしめた女は若い詩人の頬に頬をよせて小さいふるえた声でささやくように云いました。女「美くしい私の心の人、貴方は□□(と云う事を知っておいで」年若い人の頬にはほんのりと血がさしていつもよ・・・ 宮本百合子 「無題(一)」
出典:青空文庫