・・・ピンヘッドとかサンライズとか、その後にはまたサンライトというような香料入りの両切紙巻が流行し出して今のバットやチェリーの先駆者となった。そのうちのどれだっかた東京の名妓の写真が一枚ずつ紙函に入れてあって、ぽん太とかおつまとかいう名前が田舎の・・・ 寺田寅彦 「喫煙四十年」
・・・しかしまたピンヘッドやサンライズを駆逐して国産を宣伝した点では一種のファシストでもあったのである。彼もたしかに時代の新人ではあった。 旧時代のハイカラ岸田吟香の洋品店へ、Sちゃんが象印の歯みがきを買いに行ったら、どう聞き違えたものか、お・・・ 寺田寅彦 「銀座アルプス」
・・・ 英語の head はチュートン系の haubd といったような語から来ているが、音韻法則によるとLのカプトとは別だそうである。しかしこの「ハウプト」は、そんな方則を無視するここの流義では、やはり兜の組である。 頭部を「つむり」とも・・・ 寺田寅彦 「言葉の不思議」
・・・ 熱海へ下る九十九折のピンヘッド曲路では車体の傾く度に乗合の村嬢の一団からけたたましい嬌声が爆発した。気圧の急変で鼓膜を圧迫されるのをかまわないでいたら、熱海海岸で車を下りてみると耳がひどく遠くなっているのに気がついた。いくら唾を呑込ん・・・ 寺田寅彦 「箱根熱海バス紀行」
・・・ Uneasy lies the head that wears a crown. Kings frequently lamented the miserable consequences of being born to grea・・・ 夏目漱石 「文芸の哲学的基礎」
・・・The axe was sharp, and heavy as lead,As it touched the neck, off went the head! Whir―whir―whir―whir!・・・ 夏目漱石 「倫敦塔」
・・・“Is there any room at your head, Willie?Or any room at your feet?Or any room at your side, Willie,Wherein that・・・ 正岡子規 「死後」
・・・ 警笛を鳴らさずかたっぽのヘッド・ライトをぼんやりつけたトラックがとんできた。 日本女は、寂しい歩道をときどき横に並んでる家の羽目へ左手をつっぱりながら歩いて行った。本当は新しい防寒靴をもうとっくに買わなければならない筈なんだ。底で・・・ 宮本百合子 「三月八日は女の日だ」
・・・ 林町の通りへ入ったら後から Head light、そうかな。こっち止る、うしろも止る。すると緑が出て来てドアを外からあけてくれる。そういうものごしの中にある スラリとして細かいところ。 秋の夕映午後五時・・・ 宮本百合子 「情景(秋)」
・・・その弱さの自覚される clear head が又自分にある。 人格の真の力 そのようなことを自分がわかる快心の心持だけで終ることは、結局、there is somethings ということが発見された丈である。発見!・・・ 宮本百合子 「一九二三年冬」
出典:青空文庫