・・・プドーフキンは爆発の光景を現わすのに本物のダイナマイトの爆発を撮ってみたがいっこうにすごみも何もないので、試みにひどく黒煙を出す炬火やら、マグネシウムの閃光やを取り交ぜ、おまけに爆発とはなんの縁もない、有り合わせの河流の映像を插入してみたら・・・ 寺田寅彦 「映画芸術」
・・・侯爵家の家従がパッとマグネシウムをたいてポンと写真を取ると、すぐに機関車がスクリーンにとび出してエンジンの音楽の始まるところの呼吸などはちょっと理屈なしにおもしろい。本来ならば実に退屈で到底見ていられそうもない筋と材料を使って、そうしてちっ・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・ 今度のノーベル・プライズのために不意打ちをくらった世間が例のように無遠慮に無作法にあのボーアの静かな別墅を襲撃して、カメラを向けたり、書斎の敷物をマグネシウムの灰で汚したり、美しい芝生を踏み暴したりして、たとえ一時なりともこの有為な頭・・・ 寺田寅彦 「雑記(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・る論文を発表したその晩に私の宅へ遊びに来てトリオの合奏をやっていたら、突然某新聞記者が写真班を引率して拙宅へ来訪しそうして玄関へその若い学者T君を呼び出し、その日発表した研究の要旨を聞き取り、そうしてマグネシウムの閃光をひらめかし酸化マグネ・・・ 寺田寅彦 「ジャーナリズム雑感」
・・・記念にバウムの写真をとりたいと思って、町へマグネシウムを買いに出ましたら、町の家々の窓にもワイナハトバウムの光が映って、ところどころ音楽も聞こえて愉快そうに見えました。十一時過ぎにむすこが帰って来ましたが、私はもう室へ帰って床の中で新聞を見・・・ 寺田寅彦 「先生への通信」
出典:青空文庫