・・・大きな枝を張った木陰のベンチに人相の悪い雑種のマライ人が三人何かコソコソ話し合っていた。 市場へ行く。玉ねぎや馬鈴薯に交じって椰子の実やじゃぼん、それから獣肉も干し魚もある。八百屋がバイオリンを鳴らしている。菓汁の飲料を売る水屋の小僧も・・・ 寺田寅彦 「旅日記から(明治四十二年)」
・・・アラビアの竪琴ジュンク。マライのゲンゴンと称する竹製の竪琴。シャムのコンヴォン。朝鮮のグムンゴまたクムンコなどが連想される。 中央アフリカ北東コンゴーのある地方の竪琴にクンディまたはクンズというのがある。ここまで来ると騎虎の勢いに乗じて・・・ 寺田寅彦 「日本楽器の名称」
・・・ソヴェト同盟の国境、朝鮮、満州をふくむ中華人民共和国、ビルマ、シャム、マライ、印度支那、フィリピン、とアジアの地図に描かれているどの国々をみても、こんどの戦争で日本の軍隊が侵略しなかった土地はありません。そしてそれらの国の果て果てで、平和な・・・ 宮本百合子 「新しいアジアのために」
出典:青空文庫