・・・これが単にちょっと一風変わった構図であるというだけならそれまでであるが、この構図があの場合におけるあの頭巾とあのシャツを着たあの三人のシチュエーションなりムードなりまたテンペラメントなりに実によく適合している。こういう技巧はロシア映画ではあ・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・ 食事のあとでりんごか何か食っていたようであったが、とにかく三人のムードが、食前とはすっかり一変して、なんとなく気重く落ち着いた、眠ったいような雰囲気がその食卓の上にただよっているように感ぜられた。 自分の席から二つ三つ前方の席に、・・・ 寺田寅彦 「三斜晶系」
・・・完成後、反動的な mood の要求によりて此の、明快な、希望と生活力に満ちた大工と指物を業とする五十男の物語りが書かれたのだと云っている。 主人公は、作者の故郷である Burgundy の村民で、生粋の職人である。 自然のあらゆる美・・・ 宮本百合子 「最近悦ばれているものから」
・・・そしてまた、この長編が極めて緻密に史実を調べられ、思想的背景をさぐられ、人物の配置も客観的にされながら、窮極には作者藤村の内面的なムードで統一されていて、その意味からはやはり主観的な写実を脱していないということも面白い。 人道的な感情で・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
出典:青空文庫