・・・彼女は水色の夏衣裳の胸にメダルか何かをぶら下げた、如何にも子供らしい女だった。僕の目は或はそれだけでも彼女に惹かれたかも知れなかった。が、彼女はその上に高い甲板を見上げたまま、紅の濃い口もとに微笑を浮かべ、誰かに合い図でもするように半開きの・・・ 芥川竜之介 「湖南の扇」
・・・次女は、運わるくそのメダルを発見したので、こんどは、次女に贈呈された。祖父は、この次女を偏愛している様子がある。次女は、一家中で最もたかぶり、少しの功も無いのに、それでも祖父は、何かというと此の次女に勲章を贈呈したがるのである。次女は、その・・・ 太宰治 「ろまん燈籠」
・・・現代では競技会でメダルやカップやレコードを仕留めるだけが目的の空中曲技も、昔の武士は生命のやりとり空中組み打ちの予行練習として行なったものと見える。 ポアンカレ著「科学者と詩人」の訳本を見ていたら、「学者は普通に、徐々にしか真理を征服し・・・ 寺田寅彦 「空想日録」
・・・首飾りに聖母の像のついたメダルを三つも下げている。 昼ごろサイゴンの沖を通る。四月十日 朝十時の奏楽のときに西村氏がそばへ来て楽隊のスケッチをしていた。ボーイがリモナーデを持って来たのを寝台の肱掛けの穴へはめようとしたら、穴が大・・・ 寺田寅彦 「旅日記から(明治四十二年)」
・・・achievements as a man of science is shown by the fact that in 1924 he was awarded the Symons's Gold Medal by the Royal M・・・ 寺田寅彦 「PROFESSOR TAKEMATU OKADA」
・・・「さて、レクセイ、お前は俺の首にかかったメダルじゃねえ――お前のいる場処はここにはないんだ。」 かくて、八歳のゴーリキイに愈々「人々の中」での生活が開始するのであるが、これらの多彩で苦しい幼年時代の思い出を、ゴーリキイは一九一三年有・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
出典:青空文庫