・・・が、今日坪内君はこれを傑作とも思うまいし、また坪内君の劇における功労は何百年来封鎖して余人の近づくを許さなかったランド・オブ・シバイの関門を開いたのであって『桐一葉』の価値を論ずるが如きはそもそも末である。 早稲田における坪内君の功蹟は・・・ 内田魯庵 「明治の文学の開拓者」
・・・ しからばデンマーク人はどうしてこの富を得たかと問いまするに、それは彼らが国外に多くの領地をもっているからではありません、彼らはもちろん広きグリーンランドをもちます。しかし北氷洋の氷のなかにあるこの領土の経済上ほとんど何の価値もないこと・・・ 内村鑑三 「デンマルク国の話」
・・・古いストランド雑誌にいろんな動物の色写真をうまくいろいろの人間に見立てたのがあった。ある外国人は日本の相撲の顔を見ると必ず何かの動物を思い出すと言ったが、その人の顔自身がどうも何かの獣に似ているのであった。レヴィンのかいたトルストイの顔など・・・ 寺田寅彦 「自画像」
・・・ただ大風のような音を立てて夜のラインランドを下って行った。フランクフルトで十時になった。Rrrreisekissen ! Die Decken ! と呼びあるく売り子の声が広大な停車場の穹状の屋根に響いて反射していた。そのrの喉音や語尾の自・・・ 寺田寅彦 「旅日記から(明治四十二年)」
・・・じつにこれは著者の心象中に、このような状景をもって実在したドリームランドとしての日本岩手県である。そこでは、あらゆることが可能である。人は一瞬にして氷雲の上に飛躍し大循環の風を従えて北に旅することもあれば、赤い花杯の下を行く蟻と語る・・・ 宮沢賢治 「『注文の多い料理店』新刊案内」
・・・○バン コートランド。 ○オペラ。 ○芝居。 ○西村さんのところ。 〔欄外に〕插話。 講演会。日米週報社より、本田が広告を見て訪ねて来たことをしらす。一月 八日 セントルーク退院。 九日 の朝本・・・ 宮本百合子 「「黄銅時代」創作メモ」
・・・一八八三年三月十四日――イエニーの死後三年目の早春に、人類の炬火のかかげ手カール・マルクスはメートランド・パークの家の書斎の肘掛椅子にかけて、六十五年の豊富極まりない一生を閉じた。〔一九四七年一月〕・・・ 宮本百合子 「カール・マルクスとその夫人」
・・・は、フランス文学の中でのデエヴィッド・カッパアフィルドと云われている作品であるけれども、この忘れ難い小説の前編の中ごろ以下、サルランド中学校の若い生徒監としてプチ・ショウズが経験する野蛮と冷酷と利己の環境は、とりも直さずプチ・ショウズととも・・・ 宮本百合子 「若き精神の成長を描く文学」
出典:青空文庫