・・・ 七 ファシストはアルプスを愛し、リベラリストはラインやエルベの川の景色を、マルキシストはツンドラや砂漠の景色を好むかもしれない。松やもっこくやの庭木を愛するのがファシストならば、蔦や藤やまた朝貌、烏瓜のよう・・・ 寺田寅彦 「KからQまで」
・・・ 二 つるばらと団扇とリベラリスト 鉢植えのつるばらがはやると見えて至るところの花屋の店に出ている。それが、どれもこれも申し合わせたようにいわゆる「懸崖作り」に仕立てたものばかりである。同じ懸崖にしても、少しはなんと・・・ 寺田寅彦 「錯覚数題」
・・・当時のリベラリストは、ファッシズムというものが、どんなに野蛮兇猛であるかを十分理解せず、リベラリズムの範囲は、リベラリズムそのものだけの力で防衛できるかのように考えた。その結果はどうであったろう。うちつづく戦争と理性殺戮の年々に、日本の文化・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十巻)」
・・・ ――そしてリベラリストは、いつもこういってるんです。レーニンは少くとも偉大な革命の指導者だった。しかし、日本にはまだレーニンがいないからね。 婦人党員は愉快そうに、よく揃った歯なみを見せて笑った。 ――ボルシェヴィキーが十月革・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」
・・・その国民学校の先生はリベラリストで、戦争の見とおしについて懐疑的な批判を持っている人です。そういう対話を主人公との間に交します。当時あのように禁じられていた話題をとりあげる以上は、主人公がリベラリストであるという裏書をその国民学校の先生の話・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
出典:青空文庫