・・・それからまもなく、れいのドカンドカン、シュウシュウがはじまりましたけれども、あの毎日毎夜の大混乱の中でも、私はやはり休むひまもなくあの人の手から、この人の手と、まるでリレー競走のバトンみたいに目まぐるしく渡り歩き、おかげでこのような皺くちゃ・・・ 太宰治 「貨幣」
・・・ガリレーの時代の人には彼の力学はよほど見やすくないものだったでしょう。いわゆる見やすい観念などと称するものは、例の『常識』『健全な理知』と称するものと同様にずいぶん穴だらけなものかと思います。」 この返答で聴衆が笑い出したと伝えられてい・・・ 寺田寅彦 「アインシュタイン」
・・・ガリレーはその執拗な旋毛曲りのために縄目の苦しみを受けなければならなかった。ニュートンがデカルト派の形而上学的宇宙観から割り出した物理学を離れて Hypotheses non fingo という立場からあのような偉業をしたのもそうである。H・・・ 寺田寅彦 「科学上における権威の価値と弊害」
・・・ガリレーの空気寒暖計は発明後間もなく棄てられたが、今日の標準はまた昔のガス寒暖計に逆戻りした。シーメンスが提出した白金抵抗寒暖計はいったん放棄されて、二十年後にカレンダー、グリフィスの手によって復活した。このような類例を探せばまだいくらでも・・・ 寺田寅彦 「科学上の骨董趣味と温故知新」
・・・上述のガリレー、ニュートンの発見に関する逸話はその実信ずるに足らぬ俗説であるが、しかしこれらの発見をするためにはまた非凡な準備素養を要した事は言うまでもない。ルベリエが海王星を発見したのも、天王星の運動を精細に知りその運動の説明しがたき小不・・・ 寺田寅彦 「知と疑い」
・・・しかしアインシュタインは古い昔のガリレーをほじくって相対性原理を掘りだし、ブローイーは塵に埋もれたハミルトンにはたきと磨きをかけて波動力学を作りあげた。 時々西洋へ出かけて目新しい機械や材料を仕入れて来ては田舎学者の前でしたり顔にひけら・・・ 寺田寅彦 「猫の穴掘り」
・・・それはガリレー以来、力学が始まってこのかただれも考えつかなかったほどわかりきった事であったのである。ここでアインシュタインが出て来てコロンバスの卵の殻をつぶしてデスクの上に立てた。 だれにでもわかるものでなければそれは科学ではないだろう・・・ 寺田寅彦 「春六題」
・・・現在の系統は一朝一夕に発達したものではなく、ガリレー以来漸を追うて発達して来たもので、種々な観念もだんだんに変遷し拡張されて来たものである。従って将来はまたどのような変化をし、またどのような新しい観念が採用されるようになるか、今日これを予言・・・ 寺田寅彦 「物質とエネルギー」
・・・ 二三日前にある友人とガリレーやブルノやデカルトの話をした。そうして、学説と生命とを天秤にかけた三人が三様の解決を論じた。その時に頭を往来した重苦しい雲のようなものの中に何かしらこういう夢を見させるものがあったかもしれない。 ブルノ・・・ 寺田寅彦 「LIBER STUDIORUM」
・・・ガリレー、トリツェリ、ヴィヴィアニ、オットー・フォン・ゲーリケ、フック、ボイルなどといったような人がはなはだ粗末な今から見れば子供のおもちゃのような道具を使って、それで生きた天然と格闘して、しかして驚くべき重大な画期的実験を矢継ぎばやに行な・・・ 寺田寅彦 「量的と質的と統計的と」
出典:青空文庫