・・・ ヨーロッパ諸国の社会の進歩とルネッサンス以来の人間解放の方向とは、中世封建の社会から女にだけ強要された野蛮な貞操の縛しめをといた。世界に資本主義の生産と経済が発達するにつれて個人の権利は主張されて近代資本主義社会の機構の範囲で民主・・・ 宮本百合子 「貞操について」
ルネッサンスという時代が、理性の目ざめのときであるけれども、その半面にはまだどんなに智慧のくらさを曳いていたかということはオセロにもつよくあらわれている。オセロの悲劇は美しくやさしいオセロの妻デスデモーナが、女として一枚の・・・ 宮本百合子 「デスデモーナのハンカチーフ」
・・・ レオナルド・ダ・ヴィンチは、いかにもルネッサンス開花期の人間才能の典型であった。当時の芸術科学の分野でほとんど万能に近かったと語られている。今日われわれの地球をとびまわっている航空機の発明もレオナルド・ダ・ヴィンチによって着手されてい・・・ 宮本百合子 「なぜ、それはそうであったか」
・・・として結合し合い、互の独創性を尊敬し、創作をたすけあい刺戟しあったばかりでなく、この時代は、フランス芸術の歴史にとって謂わば「ルネッサンスの運動にも似たような運動が人々の心を捉えてしまった」特別な一時代であった。作家は作家同士、意気投合して・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・なるほど、レオナルド・ダ・ヴィンチは、ルネッサンス時代の大天才の一人であり、その綜合的な独創性は冠絶したものです。ダンテにしても、「神曲」は空想とリアリズムの混った独特な作品ですけれども、これらの人々から後、イタリーの民衆は営々として数世紀・・・ 宮本百合子 「婦人の創造力」
・・・「日本におけるルネッサンスがプロレタリア・ルネッサンスでなければならぬ」という意見を支持し、「トルストイやドストイェフスキーやゲーテというような大作家は日本人の手にかかると実際の価値の十分の一ぐらい小さな作家になってしまう」と述懐した森鴎外・・・ 宮本百合子 「文学に関する感想」
ルネッサンスという時代が、人間理性の目ざめの時期でレオナルド・ダ・ヴィンチを産みながら一方では魔力が人間生活に直接関係するということをまだ信じていた野蛮な時代であったという事実を、はっきり会得しなければならないと思う。とく・・・ 宮本百合子 「真夏の夜の夢」
・・・日本の歴史を見て、深い驚きにうたれることは、ヨーロッパにおいて人文復興のルネッサンスが起り、近代に向う豊富な社会生活と文化とが発生しはじめた丁度その頃に、徳川の完全な鎖国政策がはじまったことである。ヨーロッパが、まだ蒙昧な、半ば野蛮時代の生・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・ 現代の平和と原子兵器禁止の要求にあらわされている世界人民の熱望の声々は、より高い次元での人民のルネッサンスの声々である。現代の医学では癌の発生する原因がとりのぞかれず、一分ごとに癌患者が出ている。それだからと云って、癌を人間社会から絶・・・ 宮本百合子 「私の信条」
・・・ 原勝郎氏はかつて室町時代は日本のルネッサンスの時代であると論じたことがある。日本の独自の文化であると考えられる平安朝の文化が、鎌倉時代の武家文化に覆われていた後に、ふたたびここで蘇生して来ているからである。この見方はなかなか当たってい・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
出典:青空文庫