一 永遠の緑 この英国製映画を同類の米国製レビュー映画と比べると一体の感じが随分ちがっている。後者の尖鋭なスマートな刺戟の代りに前者にはどこかやはり古典的な上品な滋味があるような気がする。 この映画の・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(5[#「5」はローマ数字、1-13-25])」
・・・工場の場合にはすぐ前の労働のシーンとの関係上あまりに実感的であるのにバルコンのほうではそれがあまりに見なれぬ変わった光景であるために、あっけにとられて現実の感じがどこかへ飛んでしまい、いわばレビューでも見るような気になって見たせいかもしれな・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・ 大正から昭和へかけての妙技無用主義、ジャズ・レビュー時代がどれだけ続いて、その後にまた少し落ち着いてゆっくり深く深く掘り下げて洗練を経たものが喜ばれ尊重される時代が来るか、天文学者が遊星の運動を観測しているような、気長い気持ちで見てい・・・ 寺田寅彦 「錯覚数題」
・・・そのおかげで帝都の復興が立派にできて、そうして七年後の今日における円タクの洪水、ジャズ、レビューのあらしが起こったのかもしれない。 三島の町の復旧工事の早いのにも驚いた。この様子では半月もたった後に来て見たらもう災害の痕跡はきれいに消え・・・ 寺田寅彦 「時事雑感」
・・・この二人の話を聞いてからなるほどそんな事もあろうかと思って試みに当代ならびにその以前の廟堂諸侯の骨相を頭の中でレビューしながら「大臣顔」なるものの要素を分析しようと試みたのであった。 ついせんだってのあのベーブ・ルースの異常な人気でも、・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・それからもう一つには、この年に相踵いで起った色々の災害レビューの終幕における花形として出現したために、その「災害価値」が一層高められたようである。そのおかげで、それまではこの世における颱風の存在などは忘れていたらしく見える政治界経済界の有力・・・ 寺田寅彦 「颱風雑俎」
アメリカのレビュー団マーカス・ショーが日本劇場で開演して満都の人気を収集しているようであった。日曜日の開演時刻にこの劇場の前を通って見ると大変な人の群が場前の鋪道を埋めて車道まではみ出している。これだけの人数が一人一人これ・・・ 寺田寅彦 「マーカス・ショーとレビュー式教育」
・・・ 以上は近着の Geographical Review. Oct., 1932. 所載の記事から抄録したものである。 中央アジアではまだ自然が人間などの存在を無視して勝手放題にあばれ回っている。そのために気候風土が変転して都市が砂漠・・・ 寺田寅彦 「ロプ・ノールその他」
・・・浅草の興行街は幸に空襲の災難を免れていたので映画の外に芝居やレビューも追々興行されるようになったから、是非にも遊びに来るようにと手紙をもらうことも度々になったので、去年の正月も七草を過ぎたころ、見物に出かけた、その時木馬館の後あたりに小屋掛・・・ 永井荷風 「裸体談義」
・・・一つの風変りな形で、しかも実際的なブック・レビューをして見たら面白くもあるしためにもなるだろうと思ったきっかけはそこにある。そのブック・レビューの方法というのは、この一冊の「科学の学校」を土台として、それぞれの項目について私たちの身近にある・・・ 宮本百合子 「科学の常識のため」
出典:青空文庫