・・・ 一一 郵便箱 僕の家の門の側には郵便箱が一つとりつけてあった。母や伯母は日の暮れになると、かわるがわる門の側へ行き、この小さい郵便箱の口から往来の人通りを眺めたものである。封建時代らしい女の気もちは明治三十二、三年・・・ 芥川竜之介 「追憶」
・・・ 一一 その夜はまんじりとも眠れなかった。三味の音が浪の音に聴えたり、浪の音が三味の音に聴えたり、まるで夢うつつのうちに神経が冴えて来て、胸苦しくもあったし、また何物かがあたまの心をこづいているような工合であった。明・・・ 岩野泡鳴 「耽溺」
・・・それが一一どうかは分らないが、皆が皆辟易したとも云い切れまい。いや兎角く此道ではブレーキが利きにくいものだ。 だが、私は同時に、これと併行した外の考え方もしていた。 彼女は熱い鉄板の上に転がった蝋燭のように瘠せていた。未だ年にすれば・・・ 葉山嘉樹 「淫賣婦」
・・・――一九二六、一一、二六―― 葉山嘉樹 「生爪を剥ぐ」
・・・そしてその地図の立派なことは、夜のようにまっ黒な盤の上に、一一の停車場や三角標、泉水や森が、青や橙や緑や、うつくしい光でちりばめられてありました。ジョバンニはなんだかその地図をどこかで見たようにおもいました。「この地図はどこで買ったの。・・・ 宮沢賢治 「銀河鉄道の夜」
・・・〇世界で、どこが一番多くいろんな名称の本を出しているか デンマーク 三・三 ポーランド 六・五 イタリー 六・九 アメリカ 一〇・三 フランス 一一・九 イギリス 一三・八・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・一 二 著述業 四 二 一〇 四 ― 二 六 教員 八 三 三 ― 一 二 一七 無職 六 四 四 ― 一 四 六 其他 一一 一二 三五 一 ― 八 二・・・ 宮本百合子 「春遠し」
出典:青空文庫