・・・式を挙げるに福沢先生を証人に立てて外国風に契約を交換す結婚の新例を開き、明治五、六年頃に一夫一婦論を説いて婦人の権利を主張したほどのフェミニストであったから、身文教の首班に座するや先ず根本的に改造を企てたのは女子教育であった。 優美より・・・ 内田魯庵 「四十年前」
・・・この天然と生命との機微を無視するキリスト教的、人道主義は、簡単に、一夫一婦の厳守を強制するのみで、その無理に気がつかない。それは夫婦というものが、人間という生きもののかりのきめであることを忘れるからである。この天与の性的要求の自由性と、人間・・・ 倉田百三 「愛の問題(夫婦愛)」
・・・抑も一夫一婦家に居て偕老同穴は結婚の契約なるに、其夫婦の一方が契約を無視し敢て婬乱不品行を恣にし他の一方を疏外するが如きは、即ち之を虐待し之を侮辱することにして、破約加害の大なるものなれば、被害者たる婦人が正々堂々の議論以て其罪を責むるは、・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・されば絶対の理論においては、人間世界の善悪邪正をいかなるものぞと論究して未だ定まらざるほどの次第なれば、まして男女の内行に関し、一夫一婦法と多妻多男法と、いずれか正、いずれか邪なる、固より明断し難しといえども、開闢以来の実験に拠り、また今日・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
・・・ ソヴェト同盟における新しい内容での一夫一婦制の確立は、男女の日常生活に作用する社会関係全体が、彼ら自身の犠牲多い積年の努力で健康な土台の上に組み直されて始めて、現実の可能となったのであった。 日本の解放運動は、広く知られているとお・・・ 宮本百合子 「新しい一夫一婦」
・・・俊子は、当時の進歩的な人々のものの考えかたに従って男女平等論や一夫一婦論や女子教育論、あるいは政局批判に熱弁をふるったわけであったが、彼女の政治的見解というものははたしてどこまで深くその身についていただろうか。 年齢が若かったというばか・・・ 宮本百合子 「女性の歴史の七十四年」
・・・一年に書かれたこの『母権論』の功績は、著者バッハオーフェンが自身の神秘的な観念に制約されつつも、熱心にギリシア、ローマ等の古典文学を跋渉し、章句を引用し、彼以前には、全く空白に等しかった先史の分野に、一夫一婦制以前の社会が単に無規律性交の行・・・ 宮本百合子 「先駆的な古典として」
・・・持参金つきの商略的結婚制度に、外見上の一夫一婦制に、大きな虚偽を見出している。 これらの、本質においては極めて健康なそして尊敬すべきそれらの懐疑を発展させて、解決させるに当って、トルストイは自身の大地主、大貴族的生活からの考えかたや感情・・・ 宮本百合子 「ツルゲーネフの生きかた」
・・・新しい一夫一婦。五月。乳房。九月。小説「突堤」その他。一九三六年一月。市ヶ谷刑務所から東京地方裁判所に通って予審がはじまった。一月三十日、父の急死によって葬儀のために仮出獄した。二月。二月二十六日事件を裁・・・ 宮本百合子 「年譜」
・・・イギリスにおいて、ミルトンの一夫一婦 純潔な家庭を称揚したパラダイス ロストフランスの人々も家庭というものの幸福のために坊主の追放を考えた。p.72のルカシュスの言葉〔欄外に〕 ドイツ ルーテル スコットランド ノックス・・・ 宮本百合子 「バルザック」
出典:青空文庫