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・・・私は彼等の単純なる勇気を二なく愛して居るがゆえに、二なく尊敬して居るがゆえに、私は私の信じている世界観について一言半句も言い得ない。私の腐った唇から、明日の黎明を言い出すことは、ゆるされない。裏切者なら、裏切者らしく振舞うがいい。『職人ふぜ・・・
太宰治
「虚構の春」
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・・・とか、「上下万民に対し、一言半句もうそを云はず、かりそめにもありのまゝたるべし」とかという場合の、ありのままという言葉に現わされた気持ちがそれである。虚飾に流れていた前代の因襲的な気風に対して、ここには実力の上に立つあけすけの態度がある。戦・・・
和辻哲郎
「埋もれた日本」