・・・そうしてこの手紙を御一読なさったら、黙って破り棄てて下さい。お願いします。他の人にもおっしゃらないように。 私は、いま、自殺という事を考えています。しかし、こらえています。妻子がふびん、というよりは、私は日本国民として、私の自殺が外国の・・・ 太宰治 「十五年間」
・・・シカモ、バカ、疑ウコトサエ知ラヌ弱ク優シキ者、キミヲ畏敬シ、キミノ五百枚ノ精進ニ魂消ユルガ如ク驚キ、ハネ起キテ、兵古帯ズルズル引キズリナガラ書店ヘ駈ケツケ、女房ノヘソクリ盗ンデ短銃買ウガ如キトキメキ、一読、ムセビ泣イテ、三嘆、ワガ身クダラナ・・・ 太宰治 「創生記」
・・・という座談会の記事を一読するに、君は若いものたちの前で甚だいい気になり、やに下り、また若いものたちも、妙なことばかり言って媚びているが、しかし私は若いものの悪口は言わぬつもりだ。私に何か言われるということは、そのひとたちの必死の行路を無益に・・・ 太宰治 「如是我聞」
・・・ 私は一読者の立場として、たとえばチエホフの読者として、彼の書簡集から何ひとつ発見しなかった。私には、彼の作品「鴎」の中のトリゴーリンの独白を書簡集のあちこちの隅からかすかに聴取できただけのことであった。 読者あるいは、諸作家の書簡・・・ 太宰治 「もの思う葦」
・・・以上ただ手に触れるに任せて一読しただけのものを並べたに過ぎない。すべてが良書だというわけではない。翻訳を読むには用心しなければいけない。映画の実例についての著者の所論や感想は「続冬彦集」に集録してあるから読んでもらいたい。姉妹芸術として・・・ 寺田寅彦 「映画芸術」
・・・ これらの天象について特に興味を感ぜられる読者には岡田博士著『雨』について詳細の説明や興味ある実例を一読される事をお勧めしたい。 寺田寅彦 「凍雨と雨氷」
・・・先生から同書の寄贈を受ける日それを一読して満足な批評を書き得るならば、そうして先生の著書を天下に紹介する事が出来得るならば余の幸である。先生の意は、学位を辞退した人間としての夏目なにがしに自分の著述を読んでもらって、同じく博士を辞退した人間・・・ 夏目漱石 「博士問題とマードック先生と余」
・・・薬喰の句は蕪村集中の最俗なるもの、一読に堪えずといえども、一茶はことにこの辺より悟入したるかの感なきにあらず。けだし一茶の作時に名句なきにはあらざるも、全体を通じて言えば句法において蕪村の「酒を煮る」「絵団扇」のごときしまりなく、意匠におい・・・ 正岡子規 「俳人蕪村」
・・・感想は未完でありますから山本氏の云われる事は結論まで明かではありませんけれども、私ども常識を持った一読者として「女の一生」をみた場合、作者は検事があの作品から引き出して来られたような形で母性を讚えたのではなくて、そのような自然な母の愛が此の・・・ 宮本百合子 「「女の一生」と志賀暁子の場合」
・・・研究などは、細かい部分についてはある註解がいると思われるところもあるが、以上の問題にも連関して一読の価値があると思われた。『文化集団』では又、上述の二つの論文との対比によって、われわれに教えるところのある小松清氏の「ソ作家大会と新個人主・・・ 宮本百合子 「新年号の『文学評論』その他」
出典:青空文庫