・・・ またこの出現するのにおのずから場所が定まっている傾向があり、たとえば一里塚のような所の例があげられている。 もう一つ参考になるのは、馬をギバの難から救う方法として、これが襲いかかった時に、半纏でも風呂敷でも莚でも、そういうものを馬・・・ 寺田寅彦 「怪異考」
・・・しかし、それだけにまた、自分にとっては三十余年前の冬のある曇り日のこの珍しい体験が、過去の想い出の中に聳え立った一里塚のように顕著な印象を止めているものと思われる。「鴫突き」は鉄砲で打つのと比べれば実に原始的な方法のようであるが、また考・・・ 寺田寅彦 「鴫突き」
・・・狭く科学と限らず一般文化史上にひときわ目立って見える堅固な石造の一里塚である。 五 相対性原理に対する反対論というものが往々に見受けられる。しかし私の知り得た限りの範囲では、この原理の存在を危うくするほどに有力な・・・ 寺田寅彦 「相対性原理側面観」
・・・ 六 月花の定座の意義 連句の進行の途上ところどころに月や花のいわゆる定座が設定されていて、これらが一里塚のごとく、あるいは澪標のごとく、あるいは関所のごとく、また緑門のごとく樹立している。これは連句というものの・・・ 寺田寅彦 「連句雑俎」
・・・わたくしは古木と古碑との様子の何やらいわれがあるらしく、尋常の一里塚ではないような気がしたので、立寄って見ると、正面に「葛羅之井。」側面に「文化九年壬申三月建、本郷村中世話人惣四郎」と勒されていた。そしてその文字は楷書であるが何となく大田南・・・ 永井荷風 「葛飾土産」
・・・そして電光のように時おり苦患を中断する歓喜の瞬間をば、成長の一里塚として全力をもってつかまねばならぬ。 苦患のゆえに生を呪うものは滅べ。生きるために苦患を呪うものは腐れ。二 ショペンハウェルの哲学は苦患の生より生い出る絶・・・ 和辻哲郎 「ベエトォフェンの面」
出典:青空文庫