・・・太陽スペクトルの七色をごらんなさい。これなどは両端に赤と菫とがありまん中に黄があります。ちがっていますからどうも仕方ないのです。植物に対してだってそれをあわれみいたましく思うことは勿論です。印度の聖者たちは実際故なく草を伐り花をふむことも戒・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・菱の花が白く咲く一番池のぐるりは夏草の高く茂った馬場で、夏そこへ寝ころんで夕焼けを見ていると、いつしか体が夏草の中から泛んで七色八色の鱗雲の間をゆるく飛んで行くような気がした。そんな景色と村道の赭土にくっきり車の軌の跡のめりこんだ荒涼とした・・・ 宮本百合子 「青春」
・・・三稜鏡は、七色を反射する。けれども太陽は、単に赤色に輝くものでなく、又紫に光るものでもない事を私共は知っている。一部分宛なのだ。勿論部分は尊い。然し、友よ、私は、只一部分丈に視野を画って、今は、青い時だ、俺はその青い中でも一番強い青色を持っ・・・ 宮本百合子 「一粒の粟」
・・・ お城の倉からは、早速三巻の七色の絹糸と、真珠のような色をした白絹の布とが運ばれました。それを受取るとお婆さんは、いつもの通り「九十日目に来て下さい」と云って、ぴったり家の扉をしめてしまいました。 九十日目に来た使者は、決して途中で・・・ 宮本百合子 「ようか月の晩」
出典:青空文庫