・・・ 道二つに岐れて左の方に入れば、頻都廬、賽河原、地蔵尊、見る目、かぐ鼻、三途川の姥石、白髭明神、恵比須、三宝荒神、大黒天、弁才天、十五童子などいうものあり。およそ一町あまりにして途窮まりて後戻りし、一度旧の処に至りてまた右に進めば、幅二・・・ 幸田露伴 「知々夫紀行」
・・・なんという古めかしい事は夢に見ようといっても見られなくなり行きまして、母が真中で子供を左右にした「三宝荒神」などは浮世絵で見るほかには絵に見る事も無くなりましょう。で、万事贅沢安楽に旅行の出来るようになった代りには、芭蕉翁や西行法師なんかも・・・ 幸田露伴 「旅行の今昔」
・・・この女は初め下向いて眼を塞いで居たが、その眼を少しずつ明けながらその顔を少しずつあげると、段々すさまじい人相になって、遂に髪の逆立った三宝荒神と変ってしもうた。荒神様が消えると耶蘇が出て来た。これは十字架上の耶蘇だと見えて首をうなだれて眼を・・・ 正岡子規 「ランプの影」
出典:青空文庫