・・・ 翌日読んで、思わず考えに耽った、戯作三昧の馬琴の心持を、又思い出さずには居られない。 馬琴は、何も、眇の小銀杏が、いくら自分を滅茶にけなしたからと云って、「鳶が鳴いたからと云って、天日の歩みが止るものではない」事は知って居るのであ・・・ 宮本百合子 「樹蔭雑記」
・・・どういうことを云っているかと聞いてみると、「金持が妾をおいたり、別荘をもったり贅沢三昧をしているのは、魂の安住と云うことを知らぬ哀れなことだ。それを皆さんが羨やんだり憎んだりするのはまちがいで、貧しい者こそ心がけ一つで魂の安住が得られるのだ・・・ 宮本百合子 「反宗教運動とは?」
・・・……恥をお話ししなければ分らないけれど、急に暴れ出しましてね、刃物三昧しかねない有様なんですから、……本当に……」 石川は、幸雄の寧ろ女らしいくらいの挙動を知っているので却って信じ難いようであった。「前からそんな癖がおありだったんで・・・ 宮本百合子 「牡丹」
出典:青空文庫