・・・一般に科学というものを知らなかった上古の人間も学としての形態の充分ととのっていない支那や日本の諸子百家の教えも、また文字なき田夫野人の世渡りの法にも倫理的関心と探究と実践とはある。しかし現代に生を享けて、しかも学徒としての境遇におかれたイン・・・ 倉田百三 「学生と教養」
・・・先ず上古において厭勝の術があった。この「まじなう」という「まじ」という語は、世界において分布区域の甚だ広い語で、我国においてもラテンやゼンドと連なっているのがおもしろい。禁厭をまじないやむると訓んでいるのは古いことだ。神代から存したのである・・・ 幸田露伴 「魔法修行者」
・・・畢竟するに其親愛が虚偽にもせよ、男子が世にもあられぬ獣行を働きながら、婦人をして柔和忍辱の此頂上にまで至らしめたるは、上古蛮勇時代の遺風、殊に女大学の教訓その頂上に達したるの結果に外ならず。即ち累世の婦人が自から結婚契約の権利を忘れ、仮初に・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・「婦人をして柔和忍辱の此頂上にまで至らしめたるは上古蛮勇時代の遺風、殊に女大学の教訓その頂上に達したるの結果に外ならず」夫婦の生活で夫が妻を扶養するのは当然の義務だのに、妻たるものがわずかの美衣美食に飼い馴らされて人としての権利さえ自分から・・・ 宮本百合子 「三つの「女大学」」
出典:青空文庫