・・・この二つはいずれも緑雨自身の不得意とする作で、人の褒めるのが癪に触るといって喰って掛ったものであるが、緑雨が自ら得意とする『かくれんぼ』や『門三味線』よりは確に永遠の生命がある。聡明な眼識を持っていたがやはり江戸作者の系統を引いてシャレや小・・・ 内田魯庵 「斎藤緑雨」
・・・日本人は子音の重なるのは不得意だから st がsになることは可能である。漆喰が stucco と兄弟だとすると、この説にも一顧の価値があるかもしれない。ついでに (Skt.)jval は「燃える」である。「じわりじわり」に通じる。 なす・・・ 寺田寅彦 「言葉の不思議」
・・・ちょうど文法というものを中学の生徒などが習いますが、文法を習ったからといってそれがため会話が上手にはなれず、文法は不得意でも話は達者にもやれる通弁などいうものもあって、その方が実際役に立つと同じ事です。同じような例ですが歌を作る規則を知って・・・ 夏目漱石 「中味と形式」
出典:青空文庫