・・・そして途中ただその不意の災難を語りつづけた。 その晩はブレオーテの村を駆けまわって、人ごとに一条を話したが、一人もかれを信ずるものにあわなかった。 その夜は終夜、かれはこの一条に悩んだ。 次の日、午後一時ごろ、マリウスボーメルと・・・ 著:モーパッサン ギ・ド 訳:国木田独歩 「糸くず」
・・・この場に詰めていた侍どもも、不意の出来事に驚きあきれて、茫然として見ていたが、権兵衛が何事もないように、自若として五六歩退いたとき、一人の侍がようよう我に返って、「阿部殿、お待ちなされい」と呼びかけながら、追いすがって押し止めた。続いて二三・・・ 森鴎外 「阿部一族」
・・・すると、ナポレオンは不意にネーの肩に手をかけた。「お前はヨーロッパを征服する奴は何者だと思う」「それは陛下が一番よく御存知でございましょう」「いや、余よりもよく知っている奴がいそうに思う」「何者でございます」 ナポレオン・・・ 横光利一 「ナポレオンと田虫」
出典:青空文庫