・・・ある部分は道理だとも思うが、ある部分は明らかに他人の死殻の中へ活きた人の血を盛ろうとする不法の所為だと思う。道理だと思う部分も、結局は半面の道理たるに過ぎないから、矛盾した他の半面も同じように真理だと思う。こういう次第で心内には一も確固不動・・・ 島村抱月 「序に代えて人生観上の自然主義を論ず」
・・・斯のごとく汝らも外は正しく見ゆれども、内は偽善と不法とにて満つるなり。蛇よ、蝮の裔よ、なんじら争で、ゲヘナの刑罰を避け得んや。ああエルサレム、エルサレム、予言者たちを殺し、遣されたる人々を石にて撃つ者よ、牝鶏のその雛を翼の下に集むるごとく、・・・ 太宰治 「駈込み訴え」
・・・禍害なるかな、偽善なる学者、外は人に正しく見ゆれども、内は偽善と不法とにて満つるなり。禍害なるかな、偽善なる学者、汝らは預言者の墓をたて、義人の碑を飾りて言ふ、「我らもし先祖の時にありしならば、預言者の血を流すことに与せざりしものを」と。か・・・ 太宰治 「如是我聞」
・・・「司法権の最も大切な、重大な問題としては検事の不法取調べという問題がおこっている。こういうことを果して看過していいかどうかということについては、吾々は深く憂うるのである」。稲本錠之助弁護人は、フランス大革命当時の哲学者ジョセフ・ジューベール・・・ 宮本百合子 「それに偽りがないならば」
・・・が、体の弱いツルゲーネフはすっかり打撃をうけ、しかも居住制限によってその後何年か自分の領地スパツコイエに釘づけにされるという不法の拘束をうけたのであった。 やっと自由を恢復してから、ツルゲーネフはドイツやフランスへ遊学した。そして、再び・・・ 宮本百合子 「ツルゲーネフの生きかた」
・・・プロレタリア啓蒙婦人雑誌『働く婦人』に毎号加えられる支配階級の不法な弾圧は、日本プロレタリア文化連盟、即ち全日本のプロレタリア文化運動の上に加えられる敵の弾圧として、徹底的に強力に抗議されなければならない性質のものである。 従来日本には・・・ 宮本百合子 「婦人雑誌の問題」
・・・が同じ築地小劇場でどんな不法な解散をくったか、残念ながらあの時はデモができなかった。暴圧はわれわれの力を鍛え、今度の拡大協議会解散後のデモの画期的成功はどうでしょう! 暴圧の嵐はプロレタリアート・農民・インテリゲンチアの解放に向って燃える焔・・・ 宮本百合子 「ますます確りやりましょう」
・・・これは労働組合法によって、ストライキの権利を持ち、集団的行動の自由を獲得した勤労大衆を威嚇しようとして「暴行脅迫又は所有権の侵害の虞ある場合にはそれを不法行為として断乎取締る。」という声明が、内務、司法、商工、厚生四人の大臣によって、発せら・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫