・・・二階借りするのも不経済だったから、蝶子は種吉の所で寝泊りした。種吉へは飯代を渡すことにしたのだが、種吉は水臭いといって受取らなかった。仕送りに追われていることを知っていたのだ。 蝶子が親の所へ戻っていると知って、近所の金持から、妾になれ・・・ 織田作之助 「夫婦善哉」
・・・その風呂なるものが実にはなはだ科学的には不合理不経済に出来ているものである。その不合理不経済なところにポエトリーはあるが現代には少し不向きである。 今日は暑くて九十度を越したなどとというあの寒暖計、体温が三十九度もあるなどというあの寒暖・・・ 寺田寅彦 「家庭の人へ」
・・・ 時間の不経済な点もあって、私共の間にはもう疾うから、都会生活復帰説が持ち上っている。私共のような知識階級の貧者、同時に生活の愛好者には都会が住みよいことを発見した。そこで生れ育った人間には理屈以外都会に牽きつけられる本能があることをも・・・ 宮本百合子 「是は現実的な感想」
出典:青空文庫