・・・ 若旦那の不行跡に就いて、その母と、その店の番頭が心配している場面のようである。「それならば申し上げます。驚きなすってはいけませんよ。」「だいじょうぶだってば!」「あの、若旦那は、深夜台所へ忍び込み、あの、ひやざけ、……」と・・・ 太宰治 「酒の追憶」
・・・是等は都て家風に存することにして、稚き子供の父たる家の主人が不行跡にて、内に妾を飼い外に花柳に戯るゝなどの乱暴にては、如何に子供を教訓せんとするも、婬猥不潔の手本を近く我が家の内に見聞するが故に、千言万語の教訓は水泡に帰す可きのみ。又男女席・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・而して其不和争擾の衝に当る者は其時の未亡人即ち今日の内君にして、禍源は一男子の悪徳に由来すること明々白々なれば、苟も内を治むる内君にして夫の不行跡を制止すること能わざるは、自身固有の権利を放棄して其天職を空うする者なりと言わるゝも、弁解の辞・・・ 福沢諭吉 「新女大学」
・・・どんな約束をしているか、どう云う中か分からないが、みだらな振舞をしないから、不行跡だと云うことは出来ない。これもお蝶の信用を固うする本になっているのである。 お金は宵に大分遅くなってから、佐野さんが来たのを知っている。外の女中も知ってい・・・ 森鴎外 「心中」
出典:青空文庫