静に考えて見ると、我々人類の生活に於ては、既に両性の差別と、その間に性的交渉の存する限り、種々な結婚生活の破綻や恋愛の難問題が起って来るのは、已むを得ない事実ではあるまいかと思う。 然し、それ等の事実に対する当事者、周・・・ 宮本百合子 「深く静に各自の路を見出せ」
・・・けれども肉体の解放によって封建性に反逆し、人間性を強調するというたてまえの肉体文学が、要するに両性の性に、人間性を還元した文学にとどまり、風俗小説がその傍観的な立場をすてて進むべき方向を見出せないままに現象反映の文学に止まっていることについ・・・ 宮本百合子 「婦人作家」
・・・だから両性関係は混乱するのはさけがたいとされる見かたがある。その同じ理由からエロチックな中間小説が氾濫するといわれてもいるが、人生を大切に思っているすべての人の心には、このみじめな循環法にたつ説明だけでは納得できないものがある。こんな男にと・・・ 宮本百合子 「文学と生活」
・・・つまり、露骨な両性の関係をあまりにも頻繁に、あまりにもしつこく見せつけられて憤慨に堪えなかったからである。」 女をも不幸の荷い手として見ざるを得ないゴーリキイの育ったこういう環境と、息子が年頃になると小間使の小綺麗なのをあてがい、社交界・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイによって描かれた婦人」
・・・ 両性間の純な徳義、敏感な礼節、美しい共力はどうして得られるか。今日の生活、社会の習慣はまだまだ此等の獲得を困難なものにしています。男性も女性も、第一というところ、最も理想的というところを絶えず目ざしていて、決して雑作なく其処に着き過た・・・ 宮本百合子 「惨めな無我夢中」
・・・ざる人生の天然に従った両性関係の確立、再婚の自由、娘の結婚にあたって財産贈与などによる婦人の経済的なある程度の自立性などである。詠歌には巧みなれども自身独立の一義については夢想したこともなく、数十百部の小説をよみながら一冊の生理書をよんだこ・・・ 宮本百合子 「三つの「女大学」」
・・・自分の金を出して一つの教会を建てる騒々しい成上りものは、そう云うことで社会の尊敬を得ると思うばかりでなく、彼の奇妙な小さい霊に、彼は神を喜ばせること、人類に貢献することをしたと信じるのである。両性間の徳義についても、偽善と云う言葉は甚しく間・・・ 宮本百合子 「無題(四)」
・・・牡に対する牝としてではなく、人間女として婦人がこの社会生活に関っている心理的な面を漱石はとらえ、このことでは、両性の関係のみかたが一歩進んだのであったが、漱石は、日本の結婚生活というものが一般に女の自然的性格の発展を害するものとして見ている・・・ 宮本百合子 「若き世代への恋愛論」
出典:青空文庫