・・・ 堺氏は「およそ社会の中堅をもってみずから任じ、社会救済の原動力、社会矯正の規矩標準をもってみずから任じていた中流知識階級の人道主義者」を三種類に分け、その第三の範囲に、僕を繰り入れている。その第三の範囲というのは「労働階級の立場を是認・・・ 有島武郎 「片信」
・・・むかしの同僚、高橋安二郎君が、このごろ病気がいけなくなり、太宰氏、ほか三人の中堅、新進の作家へ、本社編輯部の名をいつわり、とんでもない御手紙さしあげて居ることが最近、判明いたしました。高橋君は、たしか三十歳。おととしの秋、社員全部のピクニッ・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・ 映画などは不良少年少女の見るものであるといったような時代放れのした気持が、いわゆる教育家や、特に真面目な中堅人士の間にいくらかでも残っている間は教育映画の時代は廻って来ないであろう。現在の映画ファンの中の堅実な分子の中から総理大臣文部・・・ 寺田寅彦 「教育映画について」
・・・そうして災害当時まだ物心のつくか付かぬであった人達が、その今から三十七年後の地方の中堅人士となっているのである。三十七年と云えば大して長くも聞こえないが、日数にすれば一万三千五百五日である。その間に朝日夕日は一万三千五百五回ずつ平和な浜辺の・・・ 寺田寅彦 「津浪と人間」
・・・ 中堅と云われ、旺に作品活動をしながら今日のこういう要求に身をさらしている作家たちの在りようは、いずれもなかなか野望に満ちているし、文学上の身ぶりも大きく、埃も泥も物かはという風であるが、それが猶且つ、文学に何かを求めている今日の感情に・・・ 宮本百合子 「人生の共感」
・・・ 三月から後、いわゆる働きざかりの中堅作家がジャーナリズムの上に出てきました。これらの作家がカムバックしたといわれています。「カムバック」というのはどういうことなのでしょう。 いままでジャーナリズムの上に作品を発表しなかった人々が書・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・などが、日本の中堅作家と同年代の外国作家の手になるものであることを見れば「明らかに盲目と無力という言葉が日本の作家に冠せられても仕方がない」伊藤整のこの感想は共感される。彼に「いまの文学のゆがみ」は明らかに意識されている。「芸術の本来の性質・・・ 宮本百合子 「人間性・政治・文学(1)」
・・・ もうこの頃には、どこの開墾村でも初代の移住者たちは年をとって、二代目が中堅となっており、村役場の三層楼も年とともに古びて来た。郡山が膨張して、附近の村々の若いものはそこの工場で働くようになったし、大戦のころ米価暴騰につられて田地を買い・・・ 宮本百合子 「村の三代」
出典:青空文庫