・・・一方に、労働調整法が出来かかったりしているが、金融資本を守るためからの失業は誰にとっても脅かしの影となっていて、勤労大衆はまったく主権在民を実現して合理的に生産関係を独占から解放しなければ、生きてゆけないところまで来ているのである。そのきょ・・・ 宮本百合子 「郵便切手」
・・・政治の時代に移った。政治の主権は藤原氏から足利に移りやがて織田信長の時代になって日本では、封建社会が確立される一歩をしるした。 豊臣秀吉を経て、徳川家康から家光の時代に、日本の封建制度は全く動かないものとなり、明治に至ったのであった。・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・「自分で anarchiste と名告って、君主だの主権者だのというものを認めない、人間の意志で縛っては貰わないと書いたのは Proudhon で、六十年程前の事でした。Nihiliste の方は、犬塚君はいろんな文学雑誌なんぞを好く見・・・ 森鴎外 「食堂」
・・・言いかえれば、政治の実権を武士階級の手に奪われてただ名目上の主権者に過ぎなかった皇室、その皇室に対する情熱を吹き込まれた。かくて父は、ちょうど頼山陽がそうであったように、足利氏の圧迫に対してただひとり皇室を守る楠公の情熱を自分の情熱としたの・・・ 和辻哲郎 「蝸牛の角」
出典:青空文庫