・・・ いま作品の名をおもい出せませんが赤穂義士の仇討に対してそれを唯封建的な忠義の行為と見ず、浪士たちの経済的事情やその他の現実的いきさつを主眼として扱ったものもあったようです。 これから森田氏がどういう作品をかかれるか知らないけれども・・・ 宮本百合子 「心から送る拍手」
・・・ 没する数年前、久しぶりでロンドンへ再遊しましたが、そのときの旅行の目的は父自身の愉しみが主眼ではなかったので、大して好きな骨董店まわりも出来なかったようでした。只、三十年前に指環、カフス・ボタンのような小物を買った店が、現在でも同様趣・・・ 宮本百合子 「写真に添えて」
・・・私のはいつも、ある材料について、その対象をいかに巧く書くかというのではなく、いかに見、いかに感じたかということが主眼なのです、そして表現は自らそれに伴なってくるものという考え方です。そういう点、里見さんの「内容と表現」というあの言い方がうな・・・ 宮本百合子 「十年の思い出」
・・・あらゆる箇性の天分を涵養することを以て主眼とする学校教育は、彼女に希望を表現するに適当な手段方向を教えましょう。純正な宗教観から見れば、とかく云うべきことはあっても教会は、徒に狭い階級的、種族的生活からは一段高く、人類の心から人生を観ること・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・ では、そういう諸作品が、何を主眼として外国をとり入れているか? 第一に、主題の異国的な目新しさだ。一九三一年の中国の日常風景は確に蒋介石のブルジョア革命の影響、列強植民地政策の行きづまりによって変っただろう。だが、吉行エイスケが中国の・・・ 宮本百合子 「プロレタリア文学における国際的主題について」
・・・みなさま御存じのとおり、日本の旧い憲法は、支配する者の絶対な権力を示すことを主眼にしてつくられたものでした。働く男女、人民の服従の義務は語られていても、その権利は示されていませんでした。その頃の日本の産業は幼稚であったばかりか、一番数の多か・・・ 宮本百合子 「メーデーと婦人の生活」
・・・先に触れたように、明治の支配者が社会に対して抱いた観念は、何処までも彼等の利害を主眼とした富国強兵を主題としていた。農民と土地との関係が、昔ながらの地主と小作の形のまま伝えられたと同じように、「家」というものと婦人との関係、男子に従属するも・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫