・・・ ソヴェト紹介の文章そのものの率直さ、何のためらいもなく真直じかに主題にふれ共産党の存在にふれている明るさが、この事実を直截に示している。それからあとプロレタリア文化文学運動の圧殺されたのち、『冬を越す蕾』『明日への精神』が、辛うじて出・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第九巻)」
・・・「プロレタリア文学における国際的主題について」は、それらの問題についてある点を語っているが、この評論のなかには、きょう、一つの参考となる経験が語られている。 それは「ズラかった信吉」の失敗にふれている箇所である。当時、わたしは、この・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十巻)」
・・・をよまされる者にとって、なにごとかを告げる主題である。また、一九三七年にどこからその基金がでたか分らない「新日本文化の会」というものが組織されて、それはもと警保局長松本学と林房雄、中河与一等によって組織された文芸懇話会の拡大されたものであっ・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十一巻)」
・・・とは、作者が戦争によって強いられていた五年間の沈黙ののちにかかれ、発表された。主題とすれば、一九三二年以来、作者にとってもっとも書きたくて、書くことの出来ずにいた主題であった。この二つの作品は、日本のすべての人々にとって忘却することのできな・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第七巻)」
・・・きょう読むと、どっちも、ほんとに苦しい小説である。主題が緊張しているばかりでなく、云いたいことを云わせられず、書きたいようにかかされない、その手枷、口枷のなかで、もがいたり呻いたりしている作品である。しかし、作者とすれば、段々戦争が進行して・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第四巻)」
・・・のうちに稚くひびいている主題は追求され展開されてゆくであろう。 伸子一人の問題としてではなく、この四分の一世紀間に、日本の進歩的な精神が当面しなければならなかった多難な歴史の課題にふれながら。「伸子」と「二つの庭」との間に二十数年がけみ・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第六巻)」
・・・それを主題にして堂々たる Philippica を発しているのである。女はこんな事を言う。豊前には諺がある。何町歩とかの畑を持たないでは、鶏を飼ってはならないというのである。然るに借家ずまいをしていて鶏を飼うなんぞというのは僭越もまた甚しい・・・ 森鴎外 「鶏」
・・・劈頭に御新造は主題を道破した。「まあ、どこから」「およめさんですか」「ええ」「そのおよめさんは」と言いさして、じっとお豊さんの顔を見つつ、「あなた」 お豊さんは驚きあきれた顔をして黙っていたが、しばらくすると、その顔に笑・・・ 森鴎外 「安井夫人」
・・・中でも最も驚いたのは、苦しむ神、蘇りの神を主題としたものであった。 その一つは『熊野の本地』である。これは日本の神社のうちでも最も有名なものの一つである熊野権現の縁起物語であるから、その流布の範囲はかなり広汎であったと考えなくてはならな・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
・・・書き出しからしてもう主題にふさわしくない。二 偶然であるか必然であるかは私は知らない、とにかく私は先生の死について奇妙な現象を見た。この秋、私は幾度か先生を訪ねようとして果たさず、ほとんど三月ぶりで十一月二十三日に先生を訪ね・・・ 和辻哲郎 「夏目先生の追憶」
出典:青空文庫