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・・・春の休暇のある日、確、静岡から久能山へ行って、それからあすこへまわったかと思う。あいにくの吹き降りで、不二見村の往還から寺の門まで行く路が、文字通りくつを没するほどぬかっていたが、その春雨にぬれた大覇王樹が、青い杓子をべたべたのばしながら、・・・
芥川竜之介
「樗牛の事」
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昭和十年七月十一日午後五時二十五分頃、本州中部地方関東地方から近畿地方東半部へかけてかなりな地震が感ぜられた。静岡の南東久能山の麓をめぐる二、三の村落や清水市の一部では相当潰家もあり人死もあった。しかし破壊的地震としては極・・・
寺田寅彦
「静岡地震被害見学記」