・・・社会が文芸を生むか、または文芸に生まれるかどっちかはしばらく措いて、いやしくも社会の道徳と切っても切れない縁で結びつけられている以上、倫理面に活動するていの文芸はけっして吾人内心の欲する道徳と乖離して栄える訳がない。 我々人間としてこの・・・ 夏目漱石 「文芸と道徳」
・・・に於て、五十嵐が牧野を酷評するモメントを、その意識的思想と実際の生活感情の乖離においていることに対して、のべられているのである。 石坂氏の「悪作家より」とこの大森氏の感想文とをあわせ読み、私は、日本における左翼運動が、世界独特な高揚と敗・・・ 宮本百合子 「落ちたままのネジ」
・・・この時、木々高太郎氏の理性と現実の乖離を強調した作品が生れたのは単なる偶然であろうか。 現実は批判する 志賀直哉氏の昔の小説に「范の犯罪」という題の作品がある。これは范という支那の剣つかいの芸人が、過って妻を芸・・・ 宮本百合子 「作家のみた科学者の文学的活動」
・・・そして、大陸に生活する日本人という響が今日つたえているテムペラメントそのものの二重性、その間の乖離、そこに生じる大小の悲劇を誠実に生きすぎて、日本の心に一つの雄大な地平線をもたらさなければならない次第だろう。日本の人が日本の在来の心に壮士風・・・ 宮本百合子 「文学の大陸的性格について」
・・・ 平田イズムが単純に社会的現実から時間的に乖離したのではなく、もっと悪どく当時の政権獲得運動者によって利用され、一般をその嵐にまき込み、しかも一時期の後、素早くそのイデオロギーの利用をすてたところもあるのではないでしょうか。尊王・攘夷と・・・ 宮本百合子 「「夜明け前」についての私信」
出典:青空文庫