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・・・西行のごときは幾多の新材料を容れたるところあるいはこの意義を解する者に似たれど、実際その歌を見ば百中の九十九は皆いつわりのたくみなるを知らん。趣味を自然に求め、手段を写実に取りし歌、前に『万葉』あり、後に曙覧あるのみ。 されば曙覧が歌の・・・
正岡子規
「曙覧の歌」
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・・・ ねえそうじゃあありませんか、 世の中の人が十(分の九十九まで自然の美くしさを非難したり馬鹿にしたって私だけはほんとうに二心のない忠臣で居られる。 私が或る時は守ってやり又或る時は守られる事が出来るまで私と自然の美くしさは近づい・・・
宮本百合子
「千世子(三)」