・・・順序の乱れるのは口に駆られる講演の常として御許しを願います。 そこで世の中では――ことに昔の道徳観や昔堅気の親の意見やまたは一般世間の信用などから云いますと、あの人は家業に精を出す、感心だと云って賞めそやします。いわゆる家業に精を出す感・・・ 夏目漱石 「道楽と職業」
・・・要するにかくのごとき社会を総べる形式というものはどうしても変えなければ社会が動いて行かない。乱れる、纏まらないということに帰着するだろうと思う。自分の妻女に対してさえも前申した通りである。否わが家の下女に対しても昔とは趣きが違うならば、教育・・・ 夏目漱石 「中味と形式」
・・・ やがて若い階級的な妻である女は、自分が良人のところへかけ込んだことを自己批判し、終局に「物事が乱れるような結果になるかもしれない。けれどもそれが何だろう」あらゆるものを投げ出したものに貞操なんか何だ? そして石川という共働者との場合に・・・ 宮本百合子 「新しい一夫一婦」
・・・一度外出するにも髪形から衣裳まで整えねばならず、風が吹けば、髪が乱れる。伝統的というのか本質的というのか、とにかく女性にはこの外廻りの小さな注意が沢山いります。それらに対して出来るだけ心配しなくてはなりません。この水の表面のような反射的な注・・・ 宮本百合子 「今日の女流作家と時代との交渉を論ず」
・・・感じの鋭い空気奴、もう南風神に告げたと見える、雲が乱れる。熱気が立ち昇る。ミーダほうれ!よしよし。この動物の血で塗りかためた、貴様等同族の髪毛の鞭が一ふり毎に億の呪いをふり出すか、兆の狂暴を吐出すか後で判ろう。呪いの鬼子、気違い力の私生・・・ 宮本百合子 「対話」
出典:青空文庫