・・・という奇妙な映画で、台湾の物産会社の東京支店の支配人が、上京した社長をこれから迎えるというので事務室で事務成績報告の予行演習をやるところがある。自分の椅子に社長をすわらせたつもりにして、その前に帳簿を並べて説明とお世辞の予習をする。それが大・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(4[#「4」はローマ数字、1-13-24])」
・・・それが事件の直前にちょうどこの百貨店で火災時の消防予行演習が行なわれていたためもあっていっそうの効力を発揮したようであるが、あの際もしもあの建物の中で遭難した人らにもう少し火災に関する一般的科学知識が普及しており、そうして避難方法に関する平・・・ 寺田寅彦 「火事教育」
・・・現代では競技会でメダルやカップやレコードを仕留めるだけが目的の空中曲技も、昔の武士は生命のやりとり空中組み打ちの予行練習として行なったものと見える。 ポアンカレ著「科学者と詩人」の訳本を見ていたら、「学者は普通に、徐々にしか真理を征服し・・・ 寺田寅彦 「空想日録」
・・・結構な事であるが、火事よりも空軍よりも数百層倍恐ろしいはずの未来の全日本的地震、五六大都市を一なぎにするかもしれない大規模地震に対する防備の予行演習をやるようなうわさはさっぱり聞かない。愚かなるわれら杞人の後裔から見れば、ひそかに垣根の外に・・・ 寺田寅彦 「時事雑感」
・・・おりから防空演習の予行日であったので、まだ予定の消燈時刻前であったが所によっては街路の両側に並んだ照明燈が消してあった。しかし店によってはまだいつものように点燈していたにもかかわらず、町の暗さが人を圧迫するように思われた。いつもは地上百尺の・・・ 寺田寅彦 「破片」
出典:青空文庫