・・・科学の事実やその方則やその応用の事例を一般読者にわかりやすいように解説することを目的としたものである。そういうものの中でもファラデー、ヘルムホルツ、マッハ、ブラグなどのものはすぐれた例である。それがすぐれている所因は単に事がらを教えるのみで・・・ 寺田寅彦 「科学と文学」
・・・ 住居に付属した庭園がまた日本に特有なものであって日本人の自然観の特徴を説明するに格好な事例としてしばしば引き合いに出るものである。西洋人は自然を勝手に手製の鋳型にはめて幾何学的な庭を造って喜んでいるのが多いのに、日本人はなるべく山水の・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
・・・いう意味の言葉に似ており、もう一つ脱線すると源頼光の音読がヘラクレースとどこか似通ってたり、もちろん暗合として一笑に付すればそれまでであるが、さればと言って暗合であるという科学的証明もむつかしいような事例はいくらでもある。ともかくも世界・・・ 寺田寅彦 「化け物の進化」
・・・甚だしきは骨肉相争い、親戚陰に謀り、家名の相続、財産の分配等、争論百出、所謂御家騒動の大波瀾を生じて人に笑わるゝの事例さえなきに非ず。而して其不和争擾の衝に当る者は其時の未亡人即ち今日の内君にして、禍源は一男子の悪徳に由来すること明々白々な・・・ 福沢諭吉 「新女大学」
・・・いわんや必勝を算して敗し、必敗を期して勝つの事例も少なからざるにおいてをや。然るを勝氏は予め必敗を期し、その未だ実際に敗れざるに先んじて自から自家の大権を投棄し、ひたすら平和を買わんとて勉めたる者なれば、兵乱のために人を殺し財を散ずるの禍を・・・ 福沢諭吉 「瘠我慢の説」
出典:青空文庫