・・・小芳さんも、蒼くなって涙を流して、とりなしてくんなすったが、たとい泣いても縋っても、こがれ死をしても構わん、おれの命令だ、とおっしゃってな、二の句は続かん、小芳さんも、俺も畳へ倒れたよ。お蔦 (やや気色まあ、死んでも構わないと、あの、え・・・ 泉鏡花 「湯島の境内」
・・・と叫けんだきり容易に二の句が出なかった。「お前この抽斗を開けや為なかったか」「否」「だって先刻入れて置いた寄附金の包みが見えないよ」「まア!」と言って妻は真蒼になった。自分は狼狽て二の抽斗を抽き放って中を一々験ためたけれど無・・・ 国木田独歩 「酒中日記」
・・・僕は苦笑しながら尋ねた。「いったい、どんな画をかくんです?」「変っています。本当に天才みたいなところもあるんです。」意外の答であった。「へえ。」僕は二の句が継げなかった。つくづく、馬鹿な夫婦だと思って、呆れた。 それから三日・・・ 太宰治 「水仙」
・・・ 僕は二の句がつげず、しんから、にがり切った。 それから数日後、僕はお酒の飲みすぎで、突然、からだの調子を悪くして、十日ほど寝込み、どうやら恢復したので、また酒を飲みに新宿に出かけた。 黄昏の頃だった。僕は新宿の駅前で、肩をたた・・・ 太宰治 「眉山」
・・・ 興味無し。興味無し。「男女合戦、と直しました。」「男女合戦、……」 二の句がつげない。馬鹿野郎。ものには程度があるぜ。シラミみたいな奴だ。傍へ寄るな、けがれる。これだから、文学青年は、いやさ。「売れましてね。」「え・・・ 太宰治 「渡り鳥」
出典:青空文庫