・・・ 作家たるもの、またこの現象を黙視し得ず、作品は二の次、もっぱらおのれの書簡集作成にいそがしく、十年来の親友に送る書簡にも、袴をつけ扇子を持って、一字一句、活字になったときの字づらの効果を考慮し、他人が覘いて読んでも判るよう文章にいちい・・・ 太宰治 「もの思う葦」
・・・われわれにとっては art は二の次で、人格が第一なのです。孔子様でなければ人格がない、なんていうのじゃない。人格といったってえらいという事でもなければ、偉くないという事でもない。個人の思想なり観念なりを中心として考えるということである。・・・ 夏目漱石 「無題」
・・・日本の独占資本家たちが、より強大な国際資本におんぶして大衆生活は二の次として生きのびる決心をしてから、それらの人々の近代化は急テンポにすすんだ。日本の港からあがって来た資本主義の独占的な本質にくっついて動くに必要な程度にまでいち早く自身の独・・・ 宮本百合子 「偽りのない文化を」
・・・かえって、かたまり、うるさいほどに互の日常生活に口を入れあって、忙しい人間同志なら二の次、三の次になる問題を論議している一団の日本人の理屈っぽくて非現実的な生活だけが浮びあがるのだ。 作者は、「その観点や構成は全部唯物弁証法的に意図した・・・ 宮本百合子 「プロレタリア文学における国際的主題について」
・・・推古仏の特徴は肢体がほっそりした印象を与えること、顔も細面であること、それらを取り扱う場合に意味ある形を作り出すことが主要なねらいであって、感覚的な興味は二の次であることなどであるが、そういう特徴を持つものが雲岡の石仏の中に全然ないとは言い・・・ 和辻哲郎 「麦積山塑像の示唆するもの」
出典:青空文庫