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・・・以後には橋口五葉氏や大塚楠緒子女史などとも絵はがきの交換があったようである。象牙のブックナイフはその後先端が少し欠けたのを、自分が小刀で削って形を直してあげたこともあった。時代をつけると言ってしょっちゅう頬や鼻へこすりつけるので脂が滲透して・・・
寺田寅彦
「夏目漱石先生の追憶」
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・・・橋口五葉氏は表紙其他の模様を意匠してくれた。両君の御蔭に因って文章以外に一種の趣味を添え得たるは余の深く徳とする所である。 自分が今迄「吾輩は猫である」を草しつつあった際、一面識もない人が時々書信又は絵端書抔をわざわざ寄せて意外の褒辞を・・・
夏目漱石
「『吾輩は猫である』上篇自序」