・・・おそろしい無秩序と官僚風のしみとおったスクータリーへ、新しい敷布を一とおり行きわたらせるためにでもナイチンゲールは、厳格な方法、きっちりした規律、些事をゆるがせにしない厳密な注意、不断の努力、不屈の意志と断乎とした決心が入用であった。彼女の・・・ 宮本百合子 「フロレンス・ナイチンゲールの生涯」
・・・などのような特異性は附随していない、獄内の日常些事の中にさえ掴みゆくものであることを、語ろうとしていると思う。「風雲」において、作者は、従来階級人の獄中生活を描いた作品が、多かれ少なかれ、からみつかれていたロマンティシズムを払いのけて、・・・ 宮本百合子 「文学における古いもの・新しいもの」
・・・ そして、ゴーリキイは、「これらのことは忽ち消えて日常の瑣事に覆われてしまった。」とその含蓄ある条を結んでいるのである。その事件があってから三十四年の後に至ってゴーリキイは「人々の中」でこの記憶に触れているのであるが、この事件の経験のし・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・他の人が絵にも歌にもしていない色彩のとり合せや、日常瑣事の風情に眼をつけていて、色彩の感覚などは今日の洋画の色感でさえ瞠目させられるようなものもある。 清少納言はそういう人であったけれども、人間のいきさつのことに関しては案外にもろく当時・・・ 宮本百合子 「山の彼方は」
出典:青空文庫