・・・且又この批評家の亜流も少くないように聞き及びました。その為に一言広告します。尤もこれを公にするのはわたくしの発意ではありません。実は先輩里見さとみとん君の煽動によった結果であります。どうかこの広告に憤る読者は里見君に非難を加えて下さい。「侏・・・ 芥川竜之介 「侏儒の言葉」
・・・であるから政治家の変装たるヂレスリーの亜流を随喜しておっても、真の文人たるヂッケンスやサッカレーに対しては何等の注意を払わなかった。当時の文学革新は恰も等外官史の羽織袴を脱がして洋服に着更えさせたようなもので、外観だけは高等官吏に似寄って来・・・ 内田魯庵 「二十五年間の文人の社会的地位の進歩」
・・・そして、日本の文芸にはこの紋切型が多すぎて、日本ほど亜流とマンネリズムが栄える国はないのである。 私はかねがね思うのだが、大阪弁ほど文章に書きにくい言葉はない。たとえば、大阪弁に「そうだ」という言葉がある。これは東京弁の「そうだ!」と同・・・ 織田作之助 「大阪の可能性」
・・・は志賀直哉の亜流的新人を送迎することに忙殺されて、日本の文壇はいまもなお小河向きの笹舟をうかべるのに掛り切りだが、果してそれは編輯者の本来の願いだろうか、小河で手を洗う文壇の潔癖だろうか。バルザックの逞しいあらくれの手を忘れ、こそこそと小河・・・ 織田作之助 「可能性の文学」
・・・ 西鶴の価を思切って低くして考えれば、谷崎君がわたくしを以て西鶴の亜流となした事もさして過賞とするにも及ばないであろう。 江戸時代の文学を見るにいずれの時代にもそれぞれ好んで市井の風俗を描写した文学者が現れている。宝暦以後、文学の中・・・ 永井荷風 「正宗谷崎両氏の批評に答う」
・・・ と云うのが支配階級とその亜流の心情なのです。 このような事情が、文学との関係にどう現れるかと云うに、少数のブルジョア高等教育を受けた女は、知識程度は高いようでも、内容の貧弱な低い生活しか持たないために、例えば宗瑛のような人にしても、結・・・ 宮本百合子 「婦人作家の「不振」とその社会的原因」
出典:青空文庫