・・・ 十五、六人の人数と十頭の犬で広い野山谷々を駆けまわる鹿を打つとはすこぶるむずかしい事のようであるが、元が崎であるから山も谷も海にかぎられていて鹿とてもさまで自由自在に逃げまわることはできない、また人里の方へは、すっかり、高い壁が石で築・・・ 国木田独歩 「鹿狩り」
・・・ 二三人の小人数で、日本兵が街を歩いていると、武器を持ったアメリカ兵は、挑戦的につめよって来た。 兵士はヒヤ/\した。同時に、なんとも云えない不愉快な反撥したい感情を味わった。それは、朝鮮人が日本人に対して持つ感情だ。そんな気がした・・・ 黒島伝治 「氷河」
・・・これからすぐに王さまのところへ行って、この前のような船と、同じ人数の水夫と、それからうじ虫と肉とパンと車と革綱を、先のとおりに用意しておもらいなさい。」と言いました。 ウイリイはその仕度がすっかり出来ますと、すぐに犬と一しょに船へ乗って・・・ 鈴木三重吉 「黄金鳥」
・・・と言うが早いか、何千人という大人数が、一どに馬にとびのって、大風のように、びゅうびゅうかけだしました。 王子たちは王女の手を引いて、遠くまでにげて来ました。するとやがて後の方で、ぽか/\/\と大そうなひづめの音が聞え出しました。王子は走・・・ 鈴木三重吉 「ぶくぶく長々火の目小僧」
・・・殊に小人数ですから家族的気分でいいとかいいながら、それだけ競争もはげしく、ぼくなど御意見を伺わされに四六時中、ですから――それに商売の性質から客の接待、休日、日曜出勤、居残り等多く、勉強する閑はありません。気をつかうのでつかれます。月給六十・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・私はからだが悪くて丙の部類なのだが、班の人数が少なかったので、御近所の班長さんにすすめられて参加する事になったのだ。枯木も山の賑わいというところだったのだが、それが激賞されるほどの善行であったとは全く思いもかけない事であった。私は、みんなを・・・ 太宰治 「鉄面皮」
・・・当時の輪講会は人数が少なくてそれだけに却って極めてインチームなものであり、至って「尤もらしく」ない「勿体臭く」ないものであった。 学生の数も少なかったから図書室などもほとんど我物顔に出入りして手当り次第にあらゆる書物を引っぱり出してはあ・・・ 寺田寅彦 「科学に志す人へ」
・・・しかし人数の桁数のちがうデパートであったらはたしてどうであろう。 これに処する根本的対策としては小学校教育ならびに家庭教育において児童の感受性ゆたかなる頭脳に、鮮明なるしかも持続性ある印象として火災に関する最重要な心得の一般を固定させる・・・ 寺田寅彦 「火事教育」
・・・ 処が人数を調べてみると、上等兵の大瀬だけが一人揚って来ねえ。そいつは大変だと云うんで、また忰を捜すと云う騒ぎだ。だが、何処を捜しても姿が見えねえ。……何でも秋山さんは深い水の底にあった、大きな木の株に挟まっていたそうでね、忰は首尾よく・・・ 徳田秋声 「躯」
・・・しかしボオトは少くとも四、五人の人数を要する上に、一度櫂を揃えて漕出せば、疲れたからとて一人勝手に止める訳には行かないので、横着で我儘な連中は、ずっと気楽で旧式な荷足舟の方を選んだ。その時分にはボオトの事をバッテラという人も多かった。浅草橋・・・ 永井荷風 「夏の町」
出典:青空文庫