・・・その時です、……洗いざらい、お雪さんの、蹴出しと、数珠と、短刀の人身御供は―― まだその上に、無慙なのは、四歳になる男の児があったんですが、口癖に――おなかがすいた――おなかがすいた――と唱歌のように唱うんです。 お雪さんは、そ・・・ 泉鏡花 「木の子説法」
・・・――山王様のお社で、むかし人身御供があがったなどと申し伝えてございます。森々と、もの寂しいお社で。……村社はほかにもございますが、鎮守と言う、お尋ねにつけて、その儀を帳場で申しますと……道を尋ねて、そこでお一人でおのぼりなさいました。目を少・・・ 泉鏡花 「眉かくしの霊」
・・・ 上前の摺下る……腰帯の弛んだのを、気にしいしい、片手でほつれ毛を掻きながら、少しあとへ退ってついて来る小春の姿は、道行から遁げたとよりは、山奥の人身御供から助出されたもののようであった。 左山中道、右桂谷道、と道程標の立った追分へ・・・ 泉鏡花 「みさごの鮨」
・・・の、宗教反対教育のために、印度の小さい女の子が変挺子なお寺の人身御供みたいなものに上げられてしまう。そしてその友達の、レントゲンを見て驚いた男の子が助けてやりたいと思って、科学者の息子に助力して貰いにいく。少年は寺へ侵入して偶像は偶像である・・・ 宮本百合子 「ソヴェト・ロシアの素顔」
出典:青空文庫