・・・を筆写したり暗記したりする勉強の仕方は、何だかみそぎを想わせるような古い方法で、このような禁慾的精進はその人の持っている文学的可能性の限界をますます狭めるようなもので、清濁あわせのむ壮大な人間像の創造はそんな修業から出て来ないのではないかと・・・ 織田作之助 「大阪の可能性」
・・・ロマン・ロランの芸術の世界で男は何と男らしく、女は何と女らしく、互の関係の中でいきいきとした人間像を浮き出させているだろう。世界文学は、感銘ふかい女性をいくたりも描いている。とりわけフランスの文学は、歴史のそれぞれの時代に女性の生きた姿をま・・・ 宮本百合子 「彼女たち・そしてわたしたち」
・・・レムブラントの晩年の自画像や老年のゴヤの自画像などは、それぞれの人間像としてわたしたちにつよい感銘を与えるものである。しかし、ケーテのこの写真は、前の二つのどの自画像ともちがっている。暗い帝国主義の歴史が生活の重量となってずっしりと彼女をと・・・ 宮本百合子 「ケーテ・コルヴィッツの画業」
・・・と同様に、現実的な人間像への芸術的肉迫を回避して、自我の意識の中で主観的に或はロマンティックに感得されている知性である。文学の傾向としてこの二者が当時相呼応するものとして現れたのには当然の理由があった。 この前後に小林秀雄が評論家として・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・一人の人間の様々の能力がその一生の間に全面的に社会活動の中に発揮され、又そうあることを自然な喜びと感じて生きるところに民主主義社会の人間像があります。 九月二十五日頃から毎日新聞にもとのアメリカ駐日大使グルーの回想記がのりました。その中・・・ 宮本百合子 「討論に即しての感想」
・・・若い女学生のうちに新しい理性や社会感情の人間像があらわれてもいる。きょうの女のことは、わたしたちが思っているよりも大規模に、複雑になって来ている。 去年の十二月、ブダペストで開かれた世界民主婦人連盟の第二回大会では、日本のわたしたちが心・・・ 宮本百合子 「人間イヴの誕生」
・・・彼女の筆致はまだ粗く、人間像の内面へまで深く迫った形象化に不足する場合もある。しかし現実生活に根をおろして、階級的作家としての成長がつづけられるならば、この作家の力量はやがて少くない成果をもたらすであろう。 一九三九年ごろの軍需インフレ・・・ 宮本百合子 「婦人作家」
出典:青空文庫