・・・丁度、仕入れして来たばかりの主人が、しきりに、いろんな本を帳場に坐っている粋なおかみさんにしまわせている。「こんなのもいい本だが、何しろこう少なくちゃ仕様がない」 主人は、本やというよりもむしろ呉服屋の年功経た番頭というような云いか・・・ 宮本百合子 「「青眉抄」について」
・・・労働階級は、自身のたゆみないたたかいを、搾取する階級に対して行っていると同時に、おなじ不屈さをもって、労働者階級のうちに巣くいむしばむ搾取階級仕入れのすべての考えかた、好み、偏見とたたかっているのである。この事実が具体的にのみこめたとき、文・・・ 宮本百合子 「両輪」
・・・どこから仕入れて来たのか、私たちの知らないことが多かった。が、ほかの人たちが話題にするのは、当時の文芸の作品とか美術とか学問上の著作とかの評判であった。漱石はそういう作品の理解や批判の力においても非常にすぐれていたと思う。若い連中にはどうし・・・ 和辻哲郎 「漱石の人物」
出典:青空文庫