・・・ある時は仕官懸命の地をうらやみ、まさか仏籬祖室の扉の奥にはいろうとは、思わなかったけれど、教壇に立って生徒を叱る身振りにあこがれ、機関車あやつる火夫の姿に恍惚として、また、しさいらしく帳簿しらべる銀行員に清楚を感じ、医者の金鎖の重厚に圧倒さ・・・ 太宰治 「春の盗賊」
・・・今の日本の習俗に於て、仕官又は商売等、戸外百般の営業は男子の任ずる所にして、一家の内事を経営するは妻の職分なり。衣服飲食を調え家の清潔法に注意し又子供を養育する等は都て人生居家の大事、之を男子戸外の業務に比して難易軽重の別なし。故に此内事の・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・この点より論ずるときは、仕官もまた営業渡世の一種なれども、俸給の他に位階勲章をあたうるは、その労力の大小にかかわらず、あたかも日本国中の人物を排列してその段等を区別するものにして、官途にはおのずから抜群の人物多きがゆえに、位階勲章を得る者の・・・ 福沢諭吉 「学問の独立」
・・・一、官の学校は自から仕官の途に近し。ゆえに青雲の志ある者は、ことに勉強することあり。その得、三なり。一、官の学校には、教師の外に俗吏の員、必ず多く、官の財を取扱うこと、あるいは深切ならずして、費冗はなはだ多し。この金を私学校に用いな・・・ 福沢諭吉 「学校の説」
・・・同時にまた彼は熱心なキリシタン排撃者であって、仕官の前年に『排耶蘇』を書いている。松永貞徳とともに、『妙貞問答』の著者不干ハビアンを訪ねた時の記事である。その時、まず第一に問題となったのは、「大地は円いかどうか」ということであった。羅山はハ・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
出典:青空文庫