-
・・・が、紀記ともに其処は仮託が多いと思われる。かみなびの神より板にする杉のおもひも過ず恋のしげきに、という万葉巻九の歌によっても知られるが、後にも「琴の板」というものが杉で造られてあって、神教をこれによりて受けるべくしたものである。これらは魔法・・・
幸田露伴
「魔法修行者」
-
・・・景憲が弾正に仮託してこの書を書いたことには何かそういう根拠があるであろう。武田氏は景憲十一歳の時に亡んだのであるが、景憲の父の世代に属する武田の遺臣のうちには家康の旗下についたものが多く、景憲はそれらの人たちからいろいろなことを聞いたであろ・・・
和辻哲郎
「埋もれた日本」